教育の基本

◯セクションとポジション◯
飲食店では、スタッフが勤務する場所は、多くのお店では大きく“キッチン”と“ホール”で分かれている。お店の規模が小さかったり、マルチプレイヤーになってくると、日によって“キッチン”と“ホール”を行き来する場合もある。
私は飲食店では「セクション」と「ポジション」をきちんと分けて考えるべきだと考えている。だいたい“キッチン”か“ホール”かで分けて採用されるスタッフは、特に深く考えずに出勤したら当たり前のようにいつもの勤務場所に行くことになる。これは日常勤務としては全く問題ないのだが、教育の場合は別である。スタッフを教育する場合に、飲食店では、初出勤してそのまま先輩に付いてもらってその日にやれることをやってもらう、と言うことがキッチンでもホールでも行われることが多い。そういう教育方法をやってしまうと、スタッフとしてはそこそこの期間働いているにも関わらず、実はここだけしかできない、ここはできるけどここはできないということが起こってしまう。毎日、少ない人数で営業していると、ある程度新人さんが働けるようになると、本人も周りも最初に教えた場所にずっといてもらうことが、その日の営業をスムーズに回すのに最適であるので、やりがちなこと。

「セクション」は、例えばキッチンでいうところのグリドル、ストーブ、フライヤー、焼き場、刺身場などの場所のこと。ホールでいうところのウエイター、バス、レセプション、キャッシャー、ディシャップなど。それに対して「ポジション」は、その日、そのスタッフが勤務する“担当セクション”のこと。例えば、今日のポジションは、スタッフAさんはホールのウエイターとバスを担当する、スタッフBさんはキッチンの焼き場とフライヤーを担当する、という感じ。ポジションはひとつのセクションとは限らない。そこまで細かくセクションを分けて、教育する際にはその日の営業とか、先輩に誰がいるから、とかではなくて「セクションごとに一つずつ教えていく」というフローを作る。そうすることによって、スタッフのセクションの教え忘れを防ぐことができる。飲食店は、特定の「スタッフ研修所」などがある大企業のお店以外は、営業中に現場に入れて教育する、というのが通例で、しかも目の前にお客様がいる状態なのが基本状態である。新人スタッフを教育中だからといって、お客様に迷惑かけられないからと、一度教えたことがあり、新人スタッフがある程度できるセクションに置きがちである。そういうことではなくて、教育をする際には、きちんとセクションごとに順番に教えていく、ということが必要なのである。

他のもので例えると、飲食店の“キッチン”と“ホール”というのは、野球で言うところの守備をする際の“内野”と“外野”と言う感覚と同じである。内野を任される選手も、最初は内野としての練習もあるかもしれないが、やはりどこかのタイミングで専門家としてファースト、セカンド、サード、ショートで分かれて練習することになる。もちろん外野も同じである。つまりそれは、飲食店の教育でも同じように、ひとりひとりのスタッフに、すべてのセクションごとに一通り教える必要がある。一度、全セクションを順番に教えていき、得意不得意や本人の希望を確認しながら後に、得意なセクションの専門家として活躍をしてもらうという流れの方がお店で活躍できるスタッフを増やすことができる。飲食店で長く勤務していると、ベテランスタッフにも関わらず「あ、私ホールはできますけどお会計やったことないんでw」みたいなことを耳にしたことがある社員さん、そういうことを言ったことあるスタッフさんも少なくないのではないだろうか。

何百席とある超大型の飲食店では、セクションをしっかりと分けて人を配置しないと回らないので、セクションを明確化することが多いのだが20〜30席くらいの中型店だと2オペ、3オペになることが多いので、阿吽の呼吸などであちらこちらに移動しながら営業することが多いので、ひとつずつセクションが分かれている、という感覚がなくなってしまう。少ない人数で、阿吽の呼吸で流れるように営業を回す人ほど、このフローを省きがちである。その流れるようなオペレーションをセクションとして考えてしまうのだろう。少ない人数で営業するからこそ、全スタッフに教え忘れをなくしておかないと、いざいつもと違うスタッフを組むときに致命的な教え忘れが起きる。

これから、ひとつずつセクションの説明もするが、小型店、中型店の飲食店でやりがちな「阿吽の呼吸」も教育目線としてはよくない、という事も今後は説明をしていきます。