今まで、数多くのアルバイトや、社員の応募者の面接を行ってきた。私は面接の際に必ず「何故、飲食店で働きたいのか?」という質問をする。そうすると返答は、大体以下の内容になる。
・家が近いから
・おしゃれだから
・楽しそうだから
・スタッフに憧れて
・美味しい料理を作りたい
・美味しいドリンクを作りた
・美味しい賄いが食べられる
など…
飲食店は昔から、「3K」「ブラックな環境」「ワンオペ」などと働く環境を揶揄されて、職場として悪いイメージも付いているし、そういう環境があることは間違いはない。しかし、こういう希望を持って飲食店に応募してくる人は少なくないことを考えると、雇う側はこの希望をどれだけ叶えてあげられるかどうかを、しっかりと考えていかなくてはならないと思う。もちろん、店舗管理者からすると「原材料高騰」「最低時給額の値上げ」「電気代高騰」などによって、働きやすい環境を作るのは容易ではない。それは間違いない。
この利益を出すことが容易ではないこの時代に、飲食店に応募してきた方々の希望を応えるには、どうしたらいいのだろうか?もちろん業態によるし、店舗にもよる。内的要因、外的要因があってスタッフにいい環境を容易に提供できない飲食店舗もある。そうなるとやはりいい環境を作るには、人を育てる“教育”が大事になってくると思う。この、食べるものに困るような時代ではないこの時代では、食を提供しているだけではどうしてもお客様を満足させれない場合もある以上、お客様の満足度はスタッフのサービスに依存することが多い。
飲食店のスタッフが「当たり前品質」「一元的品質」「魅力的品質」のサービスを徹底的に提供することにより、お客様の満足度が上がり、結果的に売上が上がり、豪華な賄いを出せたり、備品がスタッフが増えて働きやすい環境が作れるという順番である。しかし、そこまで新人スタッフが待てずに退職してしまうことが多いのも現実だ。つまり、新人スタッフの働く環境を良くするには、売上よりも教育だ。そこで私が考えるのは、その教育によって“成長するメリットを明確にすること”がとても大事だと思う。
これは私の持論でもあるのだが、飲食店でサービスやオペレーションをしっかりと学んで成長するととても素晴らしいメリットがある。それは、飲食店のサービスは「魅力的品質」のようなおおげさなものばかりではなく、「当たり前品質」や「一元的品質」のような「あって当然」と思われるサービスをどんな環境でも徹底することが大事である。それを満席でピークの時にも徹底することが“どれだけ大変か”“どれだけ難しいか”は飲食店で働いたことがある人の方が、理解できるだろう。大混雑している中で、通常オペレーションを回しながら、嬉しい一言、素敵な笑顔を常に提供できるスタッフがどれだけレベルが高いか、どれだけ尊いかは同業者が一番知っている。これはスポーツや音楽の世界などと同じで、その道のプロでなくては分からないディティールがある。飲食店で言えば、それはサービスだけではなく、料理ももちろん当てはまる。どの食材をどう使うから、この素晴らしい味ができる、などと料理人が一番美味しい料理を知っているのは、間違いない。
飲食店で働いて、教育することももちろんだが、スタッフたちも能動的に「飲食店のサービス」「飲食店の料理」をしっかりと学ぶことにより、プライベートで外食に行った際に、そのお店の「サービスのレベルの高さ」「料理のレベルの高さ」をより細かなところまで知れるのは、間違いなく“飲食店でしっかりと学んだ人たち”である。つまり、飲食店で働くメリットがそこにある。“飲食店で頑張って働いて、オペレーションやサービス、商品知識などを学んだ人ほど、外食時に一番感動体験を味わうことができる”といえる。その体験が先にあるから、他の方々が通常、ランチやディナーをする時間に働いて、クリスマスやGWなども、もてなすためにお仕事をすることに意味がある。
もちろん、環境や人間関係がよくて、毎回美味しい賄いが出て、給与も高ければ、それはもちろんいいと言えるのだが、やはりビジネスである以上、儲けがない中でその環境をどのお店でも常に提供できるとは限らない。しかし、オペレーション、サービス、商品知識について、スタッフ全員で「学ぶ」ことはいくらでも可能である。そういった環境を提供できる「教育」をするがこれからの飲食店に必要なことではないだろうか。そのために、なんとなくお仕事をするのではなく、その気になって学びながらお仕事をする飲食人が一人でも増えることを切に願う。